「辻井伸行奇跡の音色」①

遅ればせながら、辻井伸行の本を読んだ。

神原一光著、アスコム出版。

実はこの本を読もうと思ったきっかけは、辻井の恩師で彼を最年少出場させたショパンコンクールで批評家賞を獲得するまで導いた川上昌裕先生が教鞭をとる東京音大付属音楽教室へ、子供を後期入学させようと思い、指導をお願いする先生を選ぶ際に偶然に見つけたのだった。

辻井伸行は天才だから、凡人の我が子が習いたくても習えないものが多く、彼ではなく川上先生の方に興味があったのだ。

ピアニスト川上昌裕は中学生の頃にはすでにショパン全曲が弾けていた。ここで一つ強調したいのが、辻井を教えていた川上先生はピアニストであり、我が子が初めて習った先生とは違い、ピアノが弾ける先生なのだ。

確かに当時、私が素直に入門先生にこう聞いた。「先生、模範演奏を聴かせていただいてもよろしいでしょうか。」するとかの先生が、「いや、今はそういう教え方をしていないよね〜」と断った。きっと真似しかできない生徒を育てないご方針だろうに納得したのは3年間の間だったが、4年目に入ってからは明らかに弾き方を言葉のみで教えることに限界を感じ、疑問にも思い、ピティナ本選が終わるのを機に辞めた。

後に、あの先生は弾かない教え方は良くない事に気付かれたそうだが、当時在籍していた生徒のうち、10人以上が一気に辞めていったことが気付くきっかけとならなかったことを残念に思えて仕方がない。

もちろん、ピティナ所属の個人教室は、ピティナと変わらぬ営利目的が故に教育よりいかにお月謝を稼ぐことが何より大事にされているが、それにしても入門先生の終わりなき月謝アップ、ついに音大付属音楽教室よりも高くなった時点で転籍を決めた。

考え直せば、入門先生が明朗会計なら、ビジネスより教育が熱心なら、生徒の成績が優秀なら、お月謝は惜しまないつもりだったが、しかし、お月謝の納めを1日遅れただけで子供の前に親を説教したり、コンクール本番前日のレッスンで生徒をバカ呼ばわりするのは、もはや先生失格とも言える程豹変した。

ピティナがなければ、入門当時の、一生ついていきたいと思われる先生のままでいられたかもしれない。

0コメント

  • 1000 / 1000